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zoom RSS 恋愛物語〜短篇集〜

<<   作成日時 : 2009/03/27 20:31   >>

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18 営業スマイル!  昴琉(すばる りゅう)/柊椿(ひいらぎ つばき)


「はぁ……疲れた……」
 一人の少女が呟いた。
「何がだ?」
 その少女に俺は、話しかける。彼女は、俺が声をかけたことにすっげー驚いたみたいで、うわぁっ、と間の抜けた声を出した。
「なにさ、いきなり。いるならいるって言ってよ。驚くじゃん」
「今来たんだけど。で、何が疲れた、なんだよ?」
 昼休み、屋上で寝ようと思って屋上に来たら、彼女の声が聞こえたのだ。彼女を捜してたとか、んなのは一切ねぇ。 彼女、柊椿(ひいらぎ つばき)は、誰にでも優しくて愛想のいい、とても可愛い奴だ、というので有名だ。逆に俺、昴琉(すばる りゅう)は、カッコいい(らしい)けど、冷たくて愛想のない奴だ、というので有名(らしい)だ。
「……笑うの。笑うのが、疲れた」
 俺のことはあながち間違っちゃいねぇが、椿のことは間違っている。可愛いのは別だが。椿はただ、笑顔を作って自分を偽っているだけだ。俺の前じゃ、無愛想で不器用で弱い女になってる。
「私、どうすればいいと思う? 琉」
「けっ。んなこと知るか。お前のやってることだろ」
「琉に聞いた私がばかだった」
「おー、そーゆーことだ」
 俺は壁にもたれて、地面に、椅子に座るときのような感じで足を投げ出して座り、腕を組んで俯いた。屋上に来た目的を果たす為に。もうすぐ眠れる、というところまできたとき、椿が俺の隣に座った。椿は特になにもせずに、体育座りをして膝に顔をうずめているみたいだ。
「ねぇ琉」
 結局俺は寝ずに、起きていた。何故か、眠いのに眠れない。
「私、死にたい。もうヤだ。疲れた。笑うのも生きてるのも」
 死を覚悟したのかどうかはわからねぇけど、何かただならぬ決意を固めたように、椿は言った。膝から顔を上げて、前をじっと見て。椿の方を見た俺は、椿の真剣で、でも辛そうな目に、普段はあまり抱くことのない感情を抱いた。
「アホか。てかお前アホだ」
「……それ、本気で悩んでる人に言う台詞?」
 椿におもっきし顔を近づけて、軽く頬をつねって俺は言った。もちろん、ためらいなどせずサラッと。
「事実を述べたまでだ。俺は間違っちゃいねぇ」
「そうだけど。言い方あるじゃん」
「お生憎様。俺はボキャブラリーが少ないもんでね」
 椿の顔が歪む。今にも泣き出しそうだ。だけど、椿は泣かねぇ。絶対に。だってそういう奴だから。泣きたいときに泣かなくて、結局いつも泣けねぇって奴だから。
 俺は、椿に顔を近づけたまま、頬をつねる手を離す。
「……ぱり」
「あ?」
「やっぱり」
「椿?」
 泣かねぇと思っていた椿の目から、涙が零れた。俺は、表情にこそ出さなかったが、心底驚いた。
「やっぱり、琉も私のこと嫌いだよね」
 頬を伝う涙を拭いもせずに、椿は言う。その言葉を発した椿の頬を、更に涙が伝っていく。
 俺の目をじっと見つめる椿に、俺はため息をついた。
「やっぱ椿、お前アホだ。俺が思ってる以上にアホだ。椿のことが嫌いなら、なんで俺、今此処にいんだよ。椿の話聞くんだよ」
 椿の涙を拭いながら椿に言葉を返して、椿にキスをした。
 ちょうどチャイムが鳴ったけど、俺には関係ねぇ。どうせ、午後からの授業には出ねぇつもりだったし。椿はどうか、わかんねぇけど。
「笑いたくねぇなら、笑うんじゃねぇ。自然体でいればいいだろ。ごちゃごちゃ考えすぎなんだよ、椿は」
 椿は、少し考えてから頷いた。これから椿がどうするつもりかは知らねぇ。
「でも琉、私のこと」
「証拠が欲しいなら、いくらでもやるけど?」
 疑問符を浮かべる椿に、キスを落とす。
 俺が椿を好きな証拠なら、いくらでもある。いくらでも椿にやれる。

 営業スマイルを持った彼女は、俺が頼りだったらしい。俺のイメージが変わったとも言っていた。ただ、彼女には。本当の笑顔があった。


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written by 沖田さくら

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