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zoom RSS 恋愛物語〜短篇集〜

<<   作成日時 : 2009/02/02 19:55   >>

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09 雪と海と夕陽のコラボレーション  相独歌苗(そうどく かえ)/北珀世羅(きたはく せら)


 学校からの帰り道。一人で歩いている。空はそろそろオレンジ色に染まる頃。まぁ、四時半くらいだろう。
「歌苗!」
 私の名前を呼ぶ声が聞こえた。私は後ろを振り返り、私の名前を呼んだ人物は誰なのかを確かめる。……世羅だ。女っぽい漢字だけど、ちゃんと男。
「どうしたの?」
 私は走ってきた世羅に訊く。
「一緒に帰ろうと、思って。いいか?」
 息を切らしながら世羅は言う。
「いいよ」
 私は返事をして、歩き出す。世羅もついてきて、私の隣を歩く。
 しばらくの間、私と世羅は何も話さず歩いていた。
「あ……」
 小さな公園を通り過ぎようとしたとき、私はふと立ち止まって、声を漏らす。
「雪だ……」
「今日寒かったからな」
 私たちに降ってきたのは雪で、目の前に広がる壮大な海と、水平線の彼方へ沈もうとしているオレンジ色の夕陽とのコラボレーションが、とても綺麗だった。雪が降っているのだから、空には雪雲がかかっていて、だけどちょうど、夕陽のとkろおだけは雲が切れていて。
「綺麗だね」
「ああ。こんな光景、滅多にみれないぜ」
 私は幸せだ。世羅と、好きな人と一緒に、こんな綺麗な景色を見れるなんて。
 私と世羅は、夕陽が沈んでしまうまで、雰囲気を作るかのように、景色を壊さぬようにと、何も喋らず、ただただ夕陽を眺めながら、歩いていた。
 二人で見た、雪と海と夕陽のコラボレーションの景色は、言葉じゃ言い表せない。“綺麗”なんて一言じゃ伝えきれない。綺麗を通り越したずっとずっと先にあるものじゃないと、絶対にこの感動はわからない。
「歌苗」
 世羅が私の名前を呼んで立ち止まるから、私は短い返事をして立ち止まって、世羅の方を向いた。
「泣いてる、歌苗」
「え……?」
 頬を両手で包むようにして挟まれて、親指で何かを拭うような仕草を、世羅はした“何か”とはきっと、涙のことだろう。世羅が、泣いてる、と言ったから。
 私が泣いているなど、気づきもしなかった。確かに涙は頬を伝ってはいたのだけれど、全く感覚がなくて、世羅に言われて、初めて自分が泣いていると気づいた。泣いていると気づいたことによって、私の頬を流れる涙の量は、増えていって。
「どう、しようっ、世羅……っ。私、涙っ、止まらな……いっ」
「吐き出したいこと、全部言っちまえよ。全部受け止めてやるから」
 世羅の台詞は、私の心の奥底に眠っていた扉をノックして、その扉は開かれた。私は、ただがむしゃらに、出てくる全ての言葉を零した。世羅は黙って、私を抱きしめて聞いていてくれて。その世羅の優しさが引き金となったのか私の涙が止まることはなかった。出てくる言葉を全て吐き出してもなお、涙だけは出続けた。
 どれくらい沢山の涙を流したのか、どれくらい長い時間が経ったのか、それはわからない。けれど、私の涙がやっと止まった頃には、辺り一面真っ暗で、切なげに降る白い雪の明るさくらいしか光がなかった。
「なぁ歌苗」
 私をゆっくりと離しながら、世羅は言う。
「辛いこと、一人で抱えこまねェで、俺にも言ってくれよな。俺、歌苗の辛いことも背負って生きていきたいから。歌苗の笑顔見て過ごしていきたいから」
「うん……っ。ありがとう……」
 世羅の言葉の中に、好きという二文字はなかった。けれど私には、世羅が好きと言っていることがわかって。遠回しな言い方――告白だけれど、私はそれは、世羅の優しさのように思った。だから私も、ありがとう、に、世羅の告白の返事を秘めた。
 私たちはくちづけを交わした。互いの気持ちを確認するように。
 白銀に輝く降り積もった雪は、どこか温かくて、私たちを見守ってくれているんだと思った。

 ――雪は私の涙。海は世羅の優しさ。夕陽は私たちの想い。


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written by 沖田さくら

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